FREEplus(フリープラス)です。
石川県金沢市の小さな不動産屋です。

ゆっくりした時間を過ごすことができ、「小さな不動産屋」をあらためて振り返ってみました。
不動産屋を始めたのは、”家を購入する際に苦い思いをした” という私の経験が発端です。
こんな思いをする人がいなくなればいい。
私ならその心細さも悔しさも理解できる。味方になれる。
そう自惚れて、不動産屋をやっています。

今、不動産購入を考えている30代・40代の単身女性が増えています。
失敗しないために、SNSなどで家を購入するためのHow To情報などを積極的に収集していて、知識は豊富な方が多いように感じます。
その一方で不安も大きく、すでに家を購入した先輩たちの経験を参考にしたいと考えているようで、単身女性向けのマンション購入セミナーやイベントは依然人気です。

そこで、私の体験を書いてみようと思い立ちました。
実は不動産屋になる前に
・中古一戸建てを購入
・中古一戸建てを売却
・中古マンションを購入
してまして、いくつかおもしろい話(今となってはですが)も披露できます。

資金計画とか資産価値とかライフプランとかを考えすぎてしまって動けずにいるあなたに、
『自分が住みたい家を、自分で選ぶ楽しさ』はどうしても伝えたい。
そう願って、記憶をたどりながら書いていこうと思います。


20代後半はよそで暮らしていたのですが、30歳を過ぎた頃、諸般の事情により実家に戻ることになりました。
挫折を味わった私を、家族は優しく迎え入れてくれました。
無理せず過ごせるように、心を砕いてくれていたと思います。

それでも、このままずっと実家で暮らすのはなにか違う、と感じていました。
いつかは実家を出なければ、という意識だけはありました。

もともと家の間取りを見るのが好きだったこともあり、たまに不動産検索サイトを覗いていました。
いいなと思う物件はいくつかありましたが、
「すごく気に入った物件があったら、引っ越しも考えよう」
くらいの感じだったので、実際に不動産屋に連絡するのはためらっていました。
物件を見たいだけなのにしつこくされたり、逆に冷たくあしらわれるのが怖かったからです。

特に急いで探さなければいけない事情でもなかったため、実際に物件を見ることもなく、なんとなく2年が経ちました。

そうしていたところ兄から、
「注文住宅を建てるから、今住んでいる一戸建てを売却したいというお客様がいる。ご近所に知られたくないとのご希望なので、まだ広告もしていない。引き渡しに色々制約があるけれど、そのかわり売却価格は相場より安くてもいい、とおっしゃっている。引っ越しを検討しているのなら、試しに見てみたら?」
と連絡がありました。

兄の勧めならと思い、待ち合わせてその一軒家に伺いました。
特別に鍵をお預かりして、まだいくつか荷物が残るお家を拝見させていただきました。

金沢市の郊外、国道沿い。
大型ディスカウントストア近く。
築10年の3LDK。
大手ハウスメーカー施工。

新築して10年程度での引っ越しなのが気になりましたが、お子さんが3人でだいぶ手狭になったから、とのこと。
1階はLDKと水回り、2階に洋室が1つと襖で仕切られた和室の続き間が1つ、という間取りを考えれば納得できる理由です。
売主さんがすぐ近くで新築されたことを考えると、ご近所トラブルではなさそうです。
1人暮らしになるので、ご近所トラブルの有無は慎重にならざるを得ません。

南向きのLDKは日当たりが良さそうです。
前面の駐車場と庭に十分なスペースがあるので、通行人を気にせず過ごせそうです。
個人的にはレースのカーテンが苦手なので、カーテンを開けっ放しで過ごせるのは大きなポイントです。
水回りも10年前の設備とはいえ、使用に問題はなさそうです。

2階の個室を確認すると、洋室の壁に大きく “ドラえもん” が描かれていて、その画伯っぷりに声を出して笑ってしまいました。
子供部屋だったらしいこの部屋は、物置兼ウォーキングクローゼットにできそうです。
続き間の和室は日当たりが良いせいもあり、畳表がだいぶ変色しています。
家具を置いていたであろう凹みもあるので、畳の交換は必須でしょう。

それより問題なのは、一般的には嫌悪施設と言われるパチンコ店がすぐ近くにあることです。
深夜まで煌々とライトがついているので、イヤだと感じる人は多いでしょう。
ただ私にとって夜でも周辺が明るいことは、好都合です。
駐車場周辺に防犯カメラが設置されているのも、好条件です。
店内の音はほとんど漏れてきませんし、お客さんも淡々と駐車場を行き来するだけで、思っていたよりずっと静かです。

と言うわけで、全般的に建物のスペック・周辺環境に問題はありません。
提示された売却希望価格も、諸条件を勘案した控えめな価格です。

ただ、私ひとりで家を買う?それも一軒家を?と迷いました。
まだ30代前半でこれからライフプランも変化するでしょうし、なにより住宅ローンを払い続けられるのか、という不安もあります。

でも1階のLDKから外を眺めていたら、ひとりで一戸建てに住むのもおもしろいかも、と思えてきました。
女性の1人暮らしっぽくはないから賃貸の単身用アパートよりむしろ安全という考え方もできる、なんて購入するための “正当な理由” を考え始めたりして。
結局、日当たりのいい庭の一画に好きな紫陽花が植えられていて「どんな色で咲くのか見たいな」と思ったのが購入の決め手でした。

そうしてその日の内に購入を決め、話を進めてもらえるよう兄に依頼したのでした。
不動産屋になった今は、気に入った物件には “すぐに” 意思表示するのは重要だと知っていますが、そんな事情も全く知らなかったのに、よく “すぐに” 決断したな、とあの頃に自分に感心します。

まだまだ長くなるので、来週以降も続きます。