FREEplus(フリープラス)です。
石川県金沢市の小さな不動産屋です。
知人との待ち合わせで、とあるビルに行きました。
時間よりかなり早く着いてしまったので、1階のロビーで待たせてもらうことにしました。
そこにはすでに先客がいました。
泣きながら話す女性と、うんうんと頷いている男性。
「ちょっとマズい時に来ちゃったな」と思い、彼女たちから一番遠い席に、背中を向ける形で座ることにしました。
それでもその広くはないスペースでは、彼女の泣き声と話し声がとてもクリアに聞こえてきます。
なんだか気が咎めて、意味もなく靴音をさせたりして。
漏れ聞こえてくる会話から推測すると、彼女は仕事関係の人と意見の相違があって、ひどく傷ついたようです。
「○○さんは営業だから、事務方の言い分なんて気にしてないんだろうけど」
と分かってもらえなかった悔しさを滲ませながらも、
「私も営業の仕事、分からないから同じなんだけど」
と相手だけを責めることはしません。
声を抑えて泣きながら「どうしたらいいんだろう」と言う彼女は、聡明な人なのでしょう。
それをすぐ横で相槌を打ちながら、辛抱強く聞いているのは同僚のようです。
「そうだね、あの言い方はないね」
と相槌を打ちながらも、
「金額の大きな仕事は、まとまるまでに時間も掛かるから」
と彼女だけの肩を持つこともせず、時に先方の立場も伝えます。
「謝らなくてもいいけど、○○さんと普通に話すようにはしないとね」
妥協点を一緒に探そうとしてくれる彼は、いわゆるデキる人なのでしょう。
とても素敵な関係だな、と思いました。
誰かと一緒に働くことはストレスを生むこともありますが、こんな関係性を育むこともあります。
友達ではないからこそ、素直に受け入れられる言葉もあります。
多分、彼女は○○さんにこれまで通り接するように努めるでしょうし、彼はそれを見ながら何事もなかったかのように振舞うのでしょう。
そんな想像をして、なんだか微笑ましい気持ちになりました。
時間が来たので席を立つことにしました。
後ろで、「ごめんね、今まで付き合わせて」と謝る彼女の声がします。
心の中で「頑張ってくださいね」とエールを送り、待ち合わせに向かいました。
盗み聞きしてしまったことを反省しつつ。